話すこと・聴くことの大切さを実感させるために!
国語の楽しさを味わわせるために!
参考文献…「さ・ら・え書房 1995年4月発行 詩が好きになる教室」
著者:西口 俊治氏 ・ 装画:大和田 美鈴氏
①の題名は、「〇〇」の二文字です。
②の題名は、「〇〇〇〇」の四文字です。
③の題名は、「〇〇〇」の三文字です。
④の題名は、「〇〇〇〇」の四文字です。
⑤の題名は、「〇〇〇〇」の漢字四文字です。
⑥の題名は、「〇〇」の二文字です。
上記の<題名を考えてみよう>で、題名を考えるために、「根拠となる文」を読み、自分の知識や体験・感性を基にして考えるのです。
具体的には、①の根拠は「長すぎる」です。「ながい」ではなく、「ながすぎる」の「すぎる」がキーワードになります。作者のルナール氏が思っていた以上にながいものは何だったのでしょう。
子ども達と授業をすると「時間・人生・みち・くび・へび・あし」などの考えがあげられます。この考えが主張です。
「ながすぎる」という文章「根拠」から「時間・人生・みち・くび・へび・あし」などの考え「主張」を掲げました。これだけでは「国語の授業」にはなりませんね。足りないのは、「どうして、そう考えたのか」の「理由」です。
「主張」「根拠」「理由」を関係づけて話したり・聴いたり・書いたりできる力を育てることが、生きる力をにつながる国語教育だと考えます。「三角ロジック」を検索してみてください。
子ども達の考えの「例」を紹介します。
Aさんは、「ながすぎる」という根拠から「人生」という主張を導き出しました。その「理由」として「寿命は約80年ですね。今の僕たちの約8倍もあるから、長すぎる」と言ったのだと思います。「すぎる」という言語には、「マイナス」要素が多く含まれます。通り過ぎる。行き過ぎる。食べ過ぎる。など。だから、Aさんは、「人生は辛い。そんな辛い人生が約8倍も続くのだ」と思ったのでしょうかね。
Bさんは、「私の考えた題名は時間です。Aさんの考えもわかるけれど、一人の人生が終わっても、時間はまだまた永遠に続きます。時間はこれからずっと続くので長すぎる。と書いたのだと思います。」
教師が、補助発問(ヒント)として、「ルナールさんが見た物をながすぎると表現しました。」と言ってあれば、「見た物」をヒントに「人生や時間」は見えません。だから、私は「道(みち)」だと思います。というCさんの発言が出てくるでしょう。出なかったとして、「さっき、先生は、ルナールさんが見た物をながすぎると表現しました。と言ったよ。」と、「見た」を強調することも教師のかかわりとして大切です。
また、「ひらがな二文字」と言っておくと、子ども達の考え方も変わってきます。教師の言ったことが、子ども達の考え方を大きく左右することを心に留めておいてください。
「答えを知りたい」というのではなく、答えを導きだす過程「課題については一人一人が考える。考えを書く・相手と相談する・グループで考え合う・全員で話し合う」などの言語活動を子ども達一人一人が楽しんでくれればよいのです。
子ども達は十分言語活動を楽しんだとしても、「ルナールさんが見て、長いと表現した物」は知りたいです。だから、子ども達は、「先生。黒板に答えはありますか?」と尋ねてきます。そんな発言がある学級は、学習集団して成立している学級ですね。「あります。教えようか。」と先生。「もう少し考える」と子ども達。こんなやりとりができる学級は、学習が深まっていく学級ですね。
<この詩の題名をみんなで考えよう>と課題を提示する。
「何を育てる教材なのか」で紹介した通り、①で三角ロジックを要求できる学習集団にまで育っていない学級では、「根拠…長すぎる」から「題名…主張」を導き出せる過程を大切にすることが必要です。自分の思いや考えを遠慮なく出せる学級集団作りが最優先されます。
教師としては、次のように心構え・フレーズをもって、授業に臨むといいです。
①そんなこと考えたことがない。だから、考えてみよう。
②「理由」には、「なんとなく。」とか、「男の感・女の感」もいいよ。「誰だって、そう考えた訳は、心の中にあります。それを表現できるようになろうね。」それが、国語の勉強ですから。
③「考えや意見を聴いて反応してあげると、心の中を表現できる力がわくよ。みんなで応援するために、同じです。分かりました。すっきりした。私は違う考えです。納得。などと、反応しようね。」
④そんな所で笑ったり、無視したりすると、心の中を表現できる意欲はなくなってしまうよ。声を出さなくても、「うなずく」だけでもいいよ。「ウンウン。へぇ~。」の声でも反応になるね。
①~④は教師からの働きかけです。それを子ども達に実感させるために、「同じです。・はっきり・納得・と言われて、どうだった。」と、その瞬時のその子の感想を聴くことが大切です。また、「理想的な反応をしている姿を認め・広めること」も大切です。さらに、これまでできていなかった子が少しでもできるようになったら、その姿・努力を学級全体で認め・成長に拍手を贈ることも、学習集団を成立させる重要な教師のかかわりです。
特に、「ちっちゃな成長・変化」に気づく教師になってほしいです。そんな教師になれる条件は、
①子ども全員を見る。集団として見るのではなく、集団の中の一人一人を観ることが大切です。(学校での教師は「聞くではなく聴く」「見るではなく観る」の心構えが良いと考えます。)
・「先生。髪切った?」と声をかけてくれる子ども。
・「今日、ネクタイしているね。何かあるの?」と、言ってくれる子ども。
そんな子どもは、教師を観ているのです。うれしいですね。教育効果を発揮する最大のポイントは「子どもを好き」という感情です。子どもは、教師を見抜きます。年間約200日間、子ども達の前に立つ教師は観られているのです。子ども達の本能として「先生は自分のことが好きか・嫌いか」を判断する能力が備わっていることを忘れないでください。
②子ども達一人一人の話を聴くことを大切にする。子ども達は不完全な考え方・話し方・書き方をします。不完全だからこそ国語科は「1年…272時限・2年…280時限・3~4年…235時限・5年…180時限…6年…175時限」を占めているのです。
・本時のねらいに到達するために、教師にとって都合のいい発言だけを取り上げない。
・課題に対して、全員の子ども達の考えを聴くことが必要です。考えを忘れてしまうことがあるのでノートに書き留めます。ノートに考えを記すことは、最初の考えと最後の考えを比較するために必要だし、その子が何を考えているかを把握するために必要です。
・45分間に約30名の意見を毎時間聴き合うことは不可能です。ですから、「同じです」の反応で磁石式ネームプレート(以下ネームプレート))を黒板に貼ることが時間短縮になります。また、裏表の色が違うネームプレートを利用すると考えの変化を「見える化」になります。
・「あなたの言いたいことは、こんなこと」と、教師が補うことは重要な指導になります。
(例)②で考えてみましょう。 根拠「おふろあがり」 ヒント「四文字」。
<まど・みちおさんは何を見て、おふろあがりと言ったのかな>
Aさん→「赤ちゃんだと思います。お風呂上がりのおがついているので、そう思いました。」
教師→「おがついていると、どうして赤ちゃんだと思ったのかな?」
発言した子どもの意図を明確にかかわりも大切ですが、
教師→「風呂上がりよりおがついていると、かわいく感じると言いたいの。手ではなくお手々とか。花ではなくお花とか。かわいい言い方というのだね。たった一文字のおという言葉に目をつけたAさんに拍手。」
など、学級の現在の実態に即した指導・かかわりが必要です。
「国語の学習が好きですか。」の問いに「当てはまる」と答える石川県内の児童の実態は、次の通りです。(県基礎学力・全国学習状況調査より)
4年…33.8%(H22)・31.6%(H23)・33.7%(H24)・
32.3%(H25)・29.7%(H26)・31.0%(H27)・
31.0%(H28)・33.5%(H29)・30.1%(H30)
6年…19.7%(H22)・19.3%(H23)・19.7%(H24・)(以降は、調べられませんが、4年生の状況から推測できます)
が現状です。「好きこそ物の上手なれ」という諺があります。国語を好きになることが国語学習を進める基礎になります。子どもにも教師にも、当てはまります。
テレビで「アハ体験」の番組がありました。ゆっくり画像が変化していくもので、変化する物を発見する番組です。ゆっくり変化すると、脳がだまされるようです。その変化が分かると、脳が活性化していきます。分かったときは、脳は活性化しドーパミンが分泌されます。このドーパミンが脳の活性化を促します。
東京都老人総合研究所自律神経部門研究室長 青崎 敏彦氏は、ドーパミンの働きについて、「…前略…。ドーパミンニューロンは、そのような(略)行動の動機付けに関連して活動を増すことがわかってきました。…中略…私たちは周囲の環境に適応し、学習しながら、生活するすべを会得していきます。言ってみれば人生は学習の連続です。ドーパミンはそのような学習の強化因子として働いているのです。…後略…。」とネットに載せています。
このドーパミンを分泌させる1つの方法として「〇〇〇…」の言葉を考えさせる学習があります。③を例にして考えてみましょう。
①根拠「さんぱつはきらい」。ヒント「〇〇〇」の3文字。
②課題<まど・みちおさんは、何を見て「さんぱつはきらい」と言ったのかな?>
③全員を起立させ、「思い当たった人から座りましょう」と伝える。
④全員が分からなかったら、「先生。ヒントを出してください」と言わせる。
教師→「はじめの1文字は、けです。」と黒板に書く。
⑤座った人がいたら、「〇〇さん。ヒントを出してください。」とその子に、もう一文字書いてもらう。
⑥たった3文字しかないので、3文字目を書く前に、全員が座らせるように教師が工夫します。
※ 「分かった」と言って座る子の表情を観てください。全員微笑んでいます。この微笑み「口角を上げる」がドーパミンを分泌させ、次の学習への動機付けになるのです。
⑦「さんぱつがきらいなもの」→「け〇〇」となります。もうお分かりですね。
⑧ヒントの出し方は、1文字を書く方法・言葉でヒントを言う方法・動きで表す方法など考えられますが、年齢と学級の実態に応じたやってみてください。
※ とにかく、「分かった」という声を出させてください。全員にです。「先生。もう一つ問題を出して。」と子ども達が食いついてくれれば、「学習の楽しさ=分からなかったことが分かる」を体験したと言っても過言ではないと思います。
・できなかったことが、できるようになる。
・分からなかったことが、分かるようになる。
・知らなかったことを知ることができる。
・考えてみなかったことを考えることができるようになる。
そんな成長を教師や親から認められたとき、学習の楽しみ「また、勉強するぞ」を味わうことができます。教師にとっては、「評価」となる声かけが学習の楽しみにつながるのです。
・今日の勉強で、できなかったことが、できるようになって、良かったね。
・考えてみたことのないことを考えられる学級になってすごい成長だね。
・今日は全員になれたね。すばらしい成長だね。
そんな教師からの言葉かけを準備して、学習展開をシミュレーションしてみてください。きっとあなたも、学習が楽しみになりますよ。
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