オフィス「和み」

ネットで「小学校教育」を支援・助言します。

儀式の指導
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  儀式は、作法(所作)指導の場面です!

 学校教育で最大の行事は、卒業式です。小学校で言えば、6年間の過程を終了した子ども達の姿を、保護者を始め、地域の方々にお披露目する式です。学校関係者にとって、卒業式当日のたった1時間30分の子ども達「特に6年生」の姿が、その学校がめざしている姿と捉えられ、評価されるのですから大変です。

 近年、「本番は頑張るが、練習では真剣さに欠けるの姿が見られる」と言う呟きを耳にします。また、6年生でも「練習に集中力を欠く子が多い」との呟きもあります。確かに子ども達の日常習慣とは違った動作や、これまでとは違った所作をすることが多いことは間違いありません。ですが、簡略化せず「伝統として、日本の文化として、子ども達に伝えていってほしい作法や心構え」があることを忘れないで指導してほしいです。
 
 このページでは、卒業式での「6年生の心構え」、「作法指導」、「呼びかけのポイント」、「歌唱指導」などについて、私の個人的な思いを提案します。子ども達を導くの教師集団の指導力向上に役立てば幸いです。 



1.6年生の心構え
①小学校学習の最後に、「儀式での心構えや作法」を勉強します。その成果を卒業式当日に、お家の人達や地域の方々に見せましょう。モチベーションを高める教師の話術・説得力が必要です。
②間違っても失敗してもいいです。大切なことは「真剣に取り組む」ことです。今日から学習して、最高の姿になれるよう先生方から、時には厳しい指導があるかもしれません。でも、頑張りましょう。「苦あれば楽あり」ですから。
 「努力する者のみに幸せは来る」とか、「昨日の自分より今日の自分。今日の自分より明日の自分を」などの言葉を伝えながら、小学校の間は身体的には日々成長しているが、技術や精神面は努力しないと獲得できないことなどを、子ども達に伝える教師であってほしいです。
③君たちが主役なので、分からないことは質問してください。できるだけ、具体的に伝えたいと思っています。今日から、頑張りましょう。
「先生の指示や命令で動くのではなく、一緒に卒業式を作っていきましょう」という感覚が重要だと考えます。

2.作法指導
①キーワードは「真剣」です。
 ・6年生達に質問し、考えされてください。
 ・「きびきびしている動作」と「だらだらしている動作」のどちらが「真剣」に見えますか? 教師がきびきびしている動作とだらだらしている動作を演技し、6年生達に具体的な姿を見せてください。
②真剣に見える「作法(動作)」を体験させる。
 ・背筋を伸ばす。
 ・指先まで気をつかう。
 ・踵から歩く。
 ・「ハイ」の返事はお家の人に聞こえるように。
 ・角の曲がり方。
 ・目の位置(その場所で、どこを見るかを具体的に)。
※自分の姿は見えないので、時間があれば、ビデオで子ども達の姿を見せ、「きびきび」と「だらだら」を再認識させることも、子ども達の意識を高めるいいアイディアです。

3.呼びかけのポイント
①言葉の語尾を伸ばさない。
 ・具体的には、「今日はあ~」と語尾の母音を伸ばさないことです。
 「今日は
、私達のために、ありがとうございます。」ではなく、 「今日は、私達のために、ありがとうございます。」と。

②「間の取り方」は、伝えたい内容によって異なります。
 ・「1、2」とか、「1、2、3」とか、間の取り方を指導していることが多いですが、内容によっては「間」を空けずに続ける方がよい場合もあります。
「例」 「(子)大きなランドセルを背負って」 「(子)入学した」 「(全)1年生。」の場合、あなたは、どのように間を入れますか?  
 常に「(間)1・2」でよいのでしょうか?
③同じ言葉を続けて言う場合は音程を上げる。
 ・「さようなら」「さようなら」「さようなら」 
 ・「ありがとうございました」「ありがとうございました」
など、同じ言葉を続けて言う場合は、1回目の言葉より2回目の言葉の音程を高くすると真剣さが伝わります。
※ また、「(子)大きなランドセルを背負って」「(子)入学した」「(全)1年生。」の場合も、だんだん音程が高くなると盛り上がります。
④その子の音程に合った言葉を。
 ・「(子)大きなランドセルを背負って」「(子)入学した」「(全)1年生。」の場合、「入学した」の音程が下がる子なら、「大きなランドセルを背負って」の子と交代することもあり得ます。ですが、学習ですから、音程を上げて声を出すことができるように成長させてほしいですね。
⑤同じ言葉は使わない。
 ・「合宿」「楽しかった」・「運動会」「楽しかった」ではなく、別の言葉を選んだ方が気持ちは伝わります。
 ・「合宿」「夜まで友達と語り合いました」 ・「運動会」「応援で声が出なくなりました」
※ 形容詞は平坦になりがちなので、動作や様子の言葉を選ぶと、表現が豊かになります。
⑥呼びかけの指導も授業です。
 ・本時の課題がなければなりません。
<分かりやすい発音で、言葉を言おう>
<分かりやすい発音のまま、体育館に響く声を出そう>
<分かり安い発音で体育館に響く声で、間を考えて伝えよう>
 ・努力しても上手にならないこともあります。大切なことは「真剣の取り組む」ことです。
ちっちゃな成長を発見でき、子ども達をその気にさせる教師になってください。


4.歌唱指導
①全体で練習する場合、歌う前に注意点を知らせておく。
 ・○○の後は、1234と伸ばすこと。
 ・~~~、ーーーは、息継ぎをせず、続けて歌う。
 ・体育館に響く前の大きさ。
 ・息をたくさん吸う。       など。
②子どもの自己評価を生かす。
 ・「何度も歌わされる」という感覚を子ども達が抱かないように、注意点の出来栄えを自己評価させたり、教師からのお褒めの言葉を投げかけたり、「歌おうとする」モチベーションを高めることが大事です。
③同じ「言葉・歌・動作等」をくり返す場合の工夫。
 ・1回目は、先生がリズムを取るね。
 ・今度(2回目)は、先生のリズム無しだよ。
 ・最後(3回目)は、みんなの後ろから聞くよ。
※ などなど、同じことをくり返す場合も、ちょっとした変化を持たせながら行うことで、モチベーションが維持できるようになります。

5.「させられる」感覚では、アドレナリンは出ない!
 「本番は頑張るが、練習では真剣さに欠ける姿が見られる」と言う呟きを山下流に解説すれば、子ども達は「練習させられている」感覚になっているからであり、本番に頑張るのは「自分達がやる気を出した」からです。
 卒業式は、6年生の晴れの舞台です。6年間慈しみ育てたお家の方々に、また、これまでお世話になった先生方に、成長した姿を、真剣に取り組んでいる姿を見せてあげたいと願うのは、教師の望みではないでしょうか。
 
 教師の言う通りに子ども達はできていなくてもいいのです。主人公は6年生の子ども達なのですから、以前の自分より成長した自分になったり、真剣に取り組める自分になれたり、作法や声の出し方や間の取り方など、日本人としての儀式を学ぶ機会を大切にしてほしいです。

 「口角を上げるだけでアドレナリンは出る」と脳科学者は言います。口角を上げるために、教師は子どもの姿を誉めてください。小さな成長や変化を発見し、伝えてください。具体的に誉めることで、アドレナリンは分泌します。真剣さは必要ですが、脅しでは口角は上がりません。子ども達の口角を上げられる教師になってくださいね。


 日々の習慣を大切に! 

 私が学校運営で時に大切にしていた言葉は、「そろった」という言葉です。1年生が2年生に進級したとき、1組・2組・3組が1年間で取り組んできたことがバラバラであっては、2年生の4月は「ゼロからのスタート」になります。近年は1年間で学級解体ですから、完全にゼロからのスタートです。

 6年間で子どもを育てる小学校教育ですから、6年間の指導の積み重ねや厚みがなければなりません。1年生の先生方にお願いしたことは、
①子どもが発言のために立った時、椅子を机に戻すことはやめてほしい。
 授業の中では立つ・座る動作は、何度とあります。椅子を机に戻す(入れる)意味はありません。現在の6年生でも発言で立った時、椅子を机に戻そうとする姿が見られます。いかに、最初にすり込んだことが後々に影響を及ぼしているかの証拠です。ですから、1年生の先生方でよく相談して、そろった作法・所作を指導してください。

 とね。 「そろった」の2つ目としては、「全校・全学年」がそろって行う。

②授業の最初は、立って「はじめます」の挨拶を。
 休み時間と授業時間の区別をつけてくれる合図は「チャイム」です。確かにチャイムで子ども達は教室に戻ってきます。パブロフの犬とまではいきませんが、習慣として身に着いています。しかし、教室に戻って座った子どもの心は、授業を頑張ろうという心になっているでしょうか。私の経験から言えば、「答えはノー」ほとんどの子の心・気持ちはまだまだ休み時間のままです。
 では、脳(頭)が休み時間と授業時間の区別をつけるためには、どうしたらよいのでしょうか。あなたなら、次のどちらが有効だと考えますか。
  A→「座ったまま」 今から○時間目の勉強を始めます。
  B
「立って」 今から○時間目の勉強を始めます。
 私は「B」です。区別をつけるには、区別をつける動作が伴うことが、重要なポイントです。「立つ→(礼をする)→座る」の一連の動作は血行を促します。疲れたときに背伸びをするように、動作が脳を切り替えてくれるのです。

 いかがですか。 このページは儀式の指導なので、私見を提案します。

③挨拶は「声だけではなく、黙礼」でもよし。
 他の学校へ入って、子ども達から「こんにちは」という挨拶があります。「こんにちは」と返すのですが、あまりにも多くの子ども達が声をかけてくれて困ってしまうこともあります。そんな時、一人の女の子が「黙礼」をして私の前を通り過ぎていきました。「日本人だな」と感じました。真っ先に「誰に教わったのだろう。」と思いました。日本には「長幼の序」がありました。
 
※「長幼の序」とは、年長者と年少者との間にある秩序。子どもは大人を敬い、大人は子どもを慈しむというあり方。
 そんな懐かしい・配慮のある日本伝統に接したように感じさせられた女の子の所作でした。誰かが教え、その教えを女の子は実行したのです。素晴らしい姿でした。仕草・所作など、立ち居振る舞いに無徳着になってしまったこの時代だからこそ、儀式で指導することの大切さを痛感するのですが、いかがでしょうか。

 卒業式シーズンが終了してしまった後ですが、「卒業式で気になっていたことを、その新鮮な気持ちを失わない時機に」と思い作成したページです。卒業式と入学式と、その意義は大きく異なりますが、儀式で指導できるチャンスを大切にしてほしいと願っています。
 
 結びになりましたが、ご卒業なされた全ての方々に「おめでとうございます」の言葉を贈ります。これまで導いてくださった先生方には、今日まで本当に、ご苦労様でした。そして、お疲れ様でした。少しの間ですが、ゆっくりお休みください。

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