Ⅰ 光村図書(ホームページ)「4年 年間指導計画」より
指導書でもよいですが、インターネットからダウンロードするとデーターとして使えるので、私はお薦めします。また、以前「平成24年度まで」と今回「平成25年度」とでは、学習活動など異なっていることがあります。
以前・今回と記していない場合は「変更なし」とご理解ください。
1.単元名 4 物語を読んでしょうかいしよう
2.教材名 一つの花 以前「8(読⑥・書②)」 今回「8読⑦書①」
3.指導目標◎○・ 言語活動■ 他教科・他教材との関連☆ 学習指導要領との対応◆
◎場面の移り変わりに注意しながら,登場人物の気持ちの変化,情景などについて,叙述をもとに想像して読むことができる。
◎物語を読んで感じたことや考えたことを発表し合い,友達との感じ方・考え方の違いに気づくことができる。
○紹介したい本を選んで読み,それについて書いたものを発表し合って,書き手の考えの明確さなどについて意見を伝え合うことができる。
■物語を読んで紹介する。
◆読(1)ウ・オ・カ,書(1)カ,伝国(1)イ(ア)
4.学習活動(時数)「以前」
(1)①「『平和』をテーマにした本を選んで,友達にしょうかいする」という学習課題を設定し,学習計画を立てる。
・「一つの花」学習後に読書会をすることを知らせ,P76・77の本を参考にして「平和」をテーマにした本を選び,並行読書する。
(2~4)②「一つの花」を,登場人物の行動や会話,繰り返し出てくる言葉に着目して,そのときの様子や気持ちを想像しながら読む。
・物語の設定を確かめたり,登場人物の気持ちや世の中の様子,出来事をとらえたりする。
・「一つの花」という題名に込められた作者の思いや願いについて考える。
・「言葉」の学習を行う。
(5~6)③心に残った言葉や文,作品に込められた作者の思いなどについて考えたことなどの中から幾つか選び,自分だったらどのようにして「一つの花」を紹介するかを考えて,「一つの花」を紹介する。
・P74を参考にして,紹介のしかたを考える。
(7~8)④紹介したい「平和」をテーマにした本について,紹介したい内容をカードに書き出し,本を提示しながら紹介し合う。
・一人一人の感じ方の違いに気づくよう交流し,読んでみたい本を選んで読書する。
4.学習活動(時数)「今回」
(1)1「『平和』をテーマにした本を読んで,友達に紹介しよう」という学習課題を設定し,学習計画を立てる。
2題名「一つの花」から,内容について想像する。
3教師の範読を聞き,初発の感想をもつ。
(2~4)4全文を読む。
5物語の設定を確かめ,人物の行動や会話に着目して,人物の気持ち,世の中の様子や出来事を読み取る。
6「一つだけ」という言葉に着目して読み,題名に込められた作者の思いについて考える。
7「言葉」の学習をする。
(5~6)8着目した事柄について,どのように伝えるかを考え,「一つの花」を紹介し合う。
(7)9「平和」をテーマにした本を紹介し合う。
(8) 10「一つの花」の学習や,物語を紹介するという活動などについて,自分の考えを書き,友達と交流する。
5.評価規準「以前」
【関】・題名から内容を予想したり,場面の様子を想像しながら読んで感想を話し合ったりしようとして いる。
【読】・物語の場面の役割について考えている。
・会話や心情表現,行動に着目し,人物の気持ちを考えている。
・題名から作者の意図を考えている。
・物語の紹介のしかたから,一人一人の感じ方に違いがあることに気づいている。
【書】・紹介したい本について書かれたものを読み合い,書き手の考えや感想について意見を述べている。
【言】・様子を表す言葉について考え,表現するときに必要な語句を増やしている。
5.評価基準「今回」
【関】・題名から内容を予想したり,場面の様子を想像しながら読んで感想を話し合ったりしようとしている。
【読】・会話や心情表現,行動に着目し,人物の気持ちを考えている。
・物語の紹介のしかたから,一人一人の感じ方に違いがあることに気づいている。
・「平和」をテーマにした本から,紹介したいものを選んで読んでいる。(1)カ
【書】・書いたものを読み合い,書き手の考えや感想について意見を述べている。
【言】・様子を表す言葉について考え,表現するときに必要な語句を増やしている。
6.生活や他教科で生きる力/道徳や他教科等と関連する題材
【社会・道徳】戦争や平和について考えさせるとともに,平和を願う心を養う題材
【図書館活動】→自分の選んだ事柄を中心にして本を紹介する力
指導目標は変更ありません。しかし、以前「8(読⑥・書②)」今回「8読⑦書①」の変更は理解しておいた方がいいですね。
Ⅱ 児童用「教科書」より 子ども達が持っている教科書には次のように記されています。
1.単元名 物語を読んでしょうかいしよう(P62)
2.活動目標 (読む) 物語の組み立てや表現のとくちょうをよく理解し、しょうかいしたい理由が分かるように伝えましょう。
3.学習(P73) 読んだ本をしょうかいしよう
(1)くわしく読みましょう
▼ 物語設定を確かめましょう。
・登場人物はだれですか。
・いつのことですか。
・どんな場面がえがかれていますか。
▼ 人物の行動や会話に着目して、それぞれの場面の、登場人物の気持ちや世の中の様子、出来事を読み取りましょう。
▼ 最後の場面に、「一つだけ」という言葉が出てこないのはなぜだと思いますか。戦争中と戦後の場面を比べて考えましょう。
▼ なぜ「一つの花」という題名がついているのでしょうか。話し合って考えましょう。
(2)「一つの花」をしょうかいしよう。P74
物語を紹介するときは、次の中からいくつかを選んで話や文章を組み立てます。
①人物-行動や人柄
②出来事-不思議なこと、意外なことなど
③あらすじ
④心に残る言葉や文
⑤作者
⑥作品のとくちょう-組み立てや表現、他の作品との違いなど
⑦作品の評判
⑧感想や考え
▼ しょうかいの仕方を考えましょう。
①「一つの花」について、何と何を取り上げてしょうかいするかを考える。
②決めた事からごとに、伝えたいことをカードに書く。
③どの事からを中心にし、どのような順番で話すかを決める。
④話の始めと結びを考える。
あなたは、何に着目して、「一つの花」を紹介しますか。
①親の、子どもへの思い
②戦争の中で生きるということ
③十年という年月
これまでの読書体験で、つぎのようなことはありましたか。考えましょう。
①物語の中のある言葉が、強く心に残ったこと。
②物語を読んで、家の人や友達にしょうかいしたいと思ったこと。
▼ 言葉をおきかえると、様子はどのように違ってきますか。
・とうとう すぐに まもなく
・たえず しばらく しばしは
たいせつ 「とくべつな言葉に着目する」(P75)
物語の中で、作者がある言葉にとくべつな意味をこめていることがあります。そのような言葉は、
例えば、次のような使われ方をします。
・題名に用いられている。
・くり返し用いられている。
・中心となる人物の会話の中で用いられている。
・出来事が起こったり解決したり、人物の気持ちがかわったりする、重要な場面で用いられる。
教科書にも設定したい課題があることを把握しておいてください。
Ⅲ 単元を構成する考え方
1.教科書としては、何を望んでいるか
単元名は「物語を読んでしょうかいしよう」ですから、ゴールも「物語を読んでしょうかいしよう」と設定するのが順当です。
2.読むことの目標
①場面の移り変わりに注意しながら,登場人物の気持ちの変化,情景などについて,叙述をもとに想像 して読むことができる。
②物語を読んで感じたことや考えたことを発表し合い,友達との感じ方・考え方の違いに気づくことが
できる。
3.伝えることの目標
○紹介したい本を選んで読み,それについて書いたものを発表し合って,書き手の考えの明確さなどについて意見を伝え合うことができる。
~授業展開編~
1.展開のスタート
物語教材だと考え、「初発の感想をノートに書かせ、感想を出し合いながら、学習課題をつくる」場合、 問題となるのは、「何の勉強をするのか」がぬけてしまう。そこで、「一つの花」読む前に、「何を学習するのか」をはっきりさせることをお薦めします。
2.展開
(0)モデルの提示
単元名「物語を読んでしょうかいしよう」を子ども達に意識させた場合、子ども達は、「①何を ②どのように 紹介するのか?」が知りたくなる。
↓
「一つの花」をしょうかいしよう。P74
↓
書き手の考えの明確さなど
↓
P62「紹介したい理由が分かるように伝える」
P74<北野さんの話し始め>モデルだけでは参考になりにくい。ゴールである「物語を読んで紹介しよう」を進めるためには、「モデル」を提示することが子ども達の学習に対する難度を下げることになる。
私は、次のようなモデルを「はじめ・なか・おわり」で考えた。
A はじめに「紹介したい理由」が分かるように書く。
B なかでは「いくつかを選ぶ」
①人物-行動や人柄 ②出来事-不思議なこと、意外なことなど
③あらすじ ④心に残る言葉や文 ⑤作者 ⑥作品のとくちょう-組み立てや表現、他の作品との違いなど
C おわりに「⑦作品の評判 ⑧感想や考え」が伝わるように書く。
(重要)子ども達が「紹介したい」と意欲を持つためには、子ども一人一人の「心情・感情」を高めなければゴールの言語活動「物語を読んで紹介しよう」につながってはいかない。そのためには、「一つの花」を問題・課題解決型の学習で読み進めることが意欲につながる。
(1)場面分けをする場合
①根拠として「行開け」で考えると、次の3場面になる。
②その他で分ける場合は、根拠を明らかにする。
③場面の「見出しを考える」…様子を読みとることになる
(2)読んで感想(不思議なこと・思ったこと・感じたこと・分からないことなど)をノートに書く。
・初発の感想は 「子ども達の読みの深さ」や「子ども達の興味・関心」を把握できる。学習のスタートラインを把握することができる。
(3)感想を出し合い、学習の課題を作る。
・「感想を出し合う」場合、ばらばらに出てきたのでは整理整頓できないので、同じような感想を続けるように子ども達に促す(ルールにすると、今後役立つ)。つまり、戦争についての感想が出たら、戦争のことについての感想を続ける。感想の中心が変わる場合は、「話は変わりますが…」など、聞き手を意識した言葉を言うことにする。この感想の出し方だと、板書しやすくなるばかりでなく、子ども達も聞きやすい。
(4)感想をまとめるめ板書する場合
①「ゆみ子・お母さん・お父さん」の人物
②「戦争・コスモス・おにぎり・一つの花」の人物以外
③「かわいそう・大変・よかった」の気持ち
この3種類をベースにすることができる。登場人物は3名であり気持ちの変化もないので、このお話では人物を中心に「あらすじ」を板書すると良い。
(例)aゆみ子は、かわいそうでした。
b戦争はだめだと思いました。
cお父さんはもどってきたのかな?
などの感想をどう位置づけるか。(黒板全体を使う。張り紙は掲示板へ)
aの発言で、「①ゆみ子が登場してきた所」「②どこら辺のゆみ子がかわいそうなのか」を意識づけられる。また、②のことから「かわいそうな場面」と「かわいそうでない場面」が意識づけられれば、「かわいそうなゆみ子が、かわいそうでなくなったのは、どうして?」と、課題作りができる。
bの発言で、「戦争をしているあたり」と「戦争が終わったようなあたり」との違いを意識付けさせることができる。<12Pには戦争が終わったと言う言葉はいないのに、どうして終わったと言うの?>と、「戦争中と戦争後のちがいに」を場面を比べながら読むことができる。
cの発言で、「お父さんが出てきた場面」を意識づけられる。「出てこない場面」では、お父さんは戦争に行って死んだ?と意識づけられる。
(5)学習課題を設定する場合
①場面分けを課題にする場合
<いくつの場面に分かれているのかな?> ← 「行空け」をもとにする。
<いくつの場面に分けられるのかな?> ← 「根拠」を明確にする必要性あり。
②場面の様子や登場人物の気持ちを想像する場合
<ゆみ子は、「一つだけちょうだい」と言うようになったのは、どうしてかな?>
<一つだけ…が、ゆみ子の最初に覚えた言葉になったのは、どうして?>
<お母さんは、「一つだけ」が口癖になっなってしまったのは、どうしてかな?>
<「なんてかわいそうな子でしょう」と、どうして、お母さんは言ったのか?>
<そんなとき、お父さんは、決まってめちゃくちゃに高い高いをするのは、どうしてかな?>
上記の<課題・問題>の表現は違うが、
・ゆみ子……いつもお腹をすかしていた。もっと、もっとと言って、いくらでもほしがる。
・お母さん…「一つだけよ」といって自分の分から一つ、ゆみ子に分け与える。
・お父さん…「そんなとき」とは「一つだけちょうだい」とゆみ子がいった時である。「決まって」は、高い高いなら自分の意志で決められる。つまり、高い高いならどれだけでもあたえられるが、ものは不足しているので与えられない。
登場人物の視点でそのつながりを読むと、「戦時中の物資不足」につながっていく。消費社会で生活する子ども達にとって、お金がないから変えないのではなく、品物がないから手に入らないことを理解させたい。
(6)矛盾は解決の意欲へ
いつもならば、めちゃくちゃに高い高いをするのに、
<お父さんは、一輪のコスモスをどうして、ゆみ子にあげたのかな?>
「いつもならば、めちゃくちゃに高い高いをするのに」という矛盾をはっきりする言葉を入れる。読み取りへの意欲が高まる。
<どうして、お父さんは、何も言わずに、汽車に乗って行ってしまったのかな>
この課題だけではなく、その前に、「行ってきます」「元気でね」「バイバイ」等と、言ってもいいはずなのに、「どうして、何も言わなかったのかな?」と、矛盾を明確にするとよい。
(7)教科書を参考にした課題「P73」
①<最後の場面に「一つだけ」という言葉が出てこないのは、どうしてかな>
②<なぜ、「一つの花」という題名がついているのでしょうか>
(8)どちらが解決意欲が高まる課題?
①<めっちゃくちゃに高い高いをするお父さんの気持ちを考えよう>
②<お父さんはどうして、めっちゃくちゃに高い高いをするのかな?>
そんなとき、おとうさんは決まって…。
(9)登場人物の気持ちを読み取る方法
①「会話」や「行動」から登場人物の気持ちを読み取る。(ごんぎつね)
②「情景」からも登場人物の気持ちを読み取ることができる。(大造じいさんとがん)
(10)一部から全体のあらすじをとる場合
学習者である子どもの意識を大切にすることが、学習意欲を高めることになる。
初発の感想の中心が「かわいそう」だとすれば、「かわいそう」を軸にあらすじをつかむ展開を組み立てる。
①「誰が」可愛そうなの。
②「どうして」かわいそうなの。
③かわいそうは「ずっと続く」の。
この発問スタイルは、いろいろと使える。
(1)2年「スイミー」
①誰がかわいそうだというの?→スイミー。
②どうして、かわいそうになったの→仲間が全員食べられたから。
③スイミーはずっとかわいそうなの?→新しい仲間と追い出したよ。
(2)4年「ごんぎつね」
①誰がいたずらばかりしているの?→ごん。
②どうして、ごんはいたずらばかりするの?→独りぼっちだから。
③ごんはずっといたずらばかりしているの?→つぐないをしたよ。
<結びに!>
単元計画はご自分の味付けで考えてください。授業は体験です。教材研究から指導案づくりのシミュレーションだけでは授業力は向上しません。自分の立てた案を基にして、教室で子ども達に発問をなげかけ、共に読み進める中で体得できる「技」が授業力です。
日々忙しい先生方にとっては、「具体的な発問や課題や展開案が知りたい」という気持ちは理解できます。
向かい話の「ももたろう」に、『ももたろうは、「一」教えると、「十」覚えた。』という文があります。お話の世界だからではなく、私は「1つの抽象を教えることで、十の具体的を分かることになる」と、私は考えました。
子ども達を教え導く教師だからこそ、「一学ぶと、十実践できる」能力を身につけてほしいと願っています。だからこそ、研究と修養の必要性があるのです。頑張ってください。