2.説明的文章の場合について
S小学校の採用2年目の先生と教材研究をする機会を得ました。3年下「すがたをかえる大豆」の教材研究の進め方を載せます。これは、私流です。
①時間が限られた中での教材研究です。
②ネットで「年間指導計画」を使います。
③年間指導計画+教科書+学習経験(既習)で単元計画を作成します。
④データーとして必ず保存します。
⑤子どもが楽しく感じる。
この5点が「私流」の考え方です。参考になれば幸いです。
教材 東京書籍 国語 三 下 あおぞら P26「すがたをかえる大豆」
1.教科書を読む
(1)段落番号をつける。
私は、段落番号は□で数字を囲います。教科書の段落ちした場所に□で番号を書きます。黒板に貼れる「段落番号札(磁石付き)」を作成しておくと番所の時、移動できるので便利です。
①段落番号を付けてみてください。
→すがたをかえる大豆は「8段落構成」です。
→物語では段落番号は付けません。長文だと、段落番号を付けて全員文を確認するだけで、45分間必要になります。
→物語では「何ページの何行目」といいます。また、「上(かみ)から何行目・下(しも)から何行目」とも言います。上(かみ)とは右側から、下(しも)とは左側からのことです。「舞台の上手から、主人公が…」とは「舞台の右側から」という意味なのです。
※余談になりますが、儀式の時、来賓は「上手に座って頂く」のが良いですし、卒業書授与は「上手から上がり、下手から降りる」動きの方が、舞台を使う本来の姿です。
(2)文番号をつける。「センテンスとも言います」
段落番号を□で囲ったので文番号は○で囲います。番号は文の頭に書くか、後に書くかは貴方が判断してください。文番号は「○読み」をしている学級では難しくありません。
①文番号も付けてみましょう。
→1段落…6文で構成させている。
→2段落…6文で構成させている。
→3段落…5文で構成させている。
→4段落…2文で構成させている。
→5段落…5文で構成させている。
→6段落…8文で構成させている。
→7段落…3文で構成させている。
→8段落…4文で構成させている。
合計「8段落で、39文(センテスン)」の構成です。これらの数は、自分の学級で音読すると、「段落読みだと、何回で全員読めるか」「文読み(○読み)だと何回で読めるか」を把握できることになります。
(3)子どもの学習経験で読んでみましょう。
3年生が「すがたをかえる大豆」を学習までに、どんな学習経験をしてきたのでしょう。説明文的文章を読む場合の既習経験を考えてみましょう。
①「題名」に着目して読む学習
②「はじめ」「なか」「おわり」の3つに分けて読む学習
③「問い」「問題文」「話題提示」を手がかりに読む学習
④「実験」「観察」「考えたこと」に分けて読む学習
①題名に着目して読む
「すがたをかえる大豆」ですから、<大豆は何に姿を変えるのかな>が素直な課題です。
→1段落…
→2段落…
→3段落…②豆まきに使う豆。③に豆。
→4段落…②きなこ。
→5段落…⑤とうふ。
→6段落…②なっとう。④みそやしょうゆ。⑦みそ。⑧しょうゆ。
→7段落…②枝豆。もやし。
→8段落…
大豆の姿を変えた具体物は、3段落から7段落に書かれています。この読み取りか方で、はじめ「1・2」段落、なか「3・4・5・6・7」段落、おわり「8」段落と、3つに分けられることに気づきます。
②「はじめ」「なか」「おわり」の3つに分けて読む
→はじめ「1・2」段落…話題提示
<どんな話題を取り上げて、「なか」で説明しているのか?>
・1段落③「なんだか分かりますか。」←問いかけ。
でも、④「それは大豆です。」と答えが書かれている。次につながらない。
・3段落①「一番分かりやすいのは、…略…、美味しくする工夫です」と書いてある。つまり、2段落⑥「昔からいろいろ手を加えて、美味しく食べる工夫をしてきました。」が話題だと考えられるのです。
しかし、気をつけなければならないことは、2段落⑥の文頭「そのため」です。「その」は指示語ですから、⑤を指しています。⑤には「固い大豆は、そのままでは食べにくく、消化もよくありません。」と書いてあります。キーワードは何と考えますか?
・かたい。
・食べにくい。
・消化がよくない。
どれですか? 3段落①を参考にして考えてみましょう。
→3段落①「やわらかく」とあるから、「固い」が最適です。話題提示は次のようになります。
大豆は固いため、昔からいろいろ手を加えて、美味しく食べる工夫をしてきました。この話題から、説明するべきなのは、A<どんな手の加え方をしてきたのかな?>と、B<どんな工夫をしてきたのかな?>です。
3~7段落の①に「くふう」というキーワードがあるので、Bを説明したかったと考えればいいです。
→なか「3・4・5・6・7」段落…具体的例を挙げての説明
各段落には、工夫が書いてあります。子ども達が課題解決的学習を進める場合、貴方の学級では
A…<3段落の工夫は何?>
B…「3段落では、大豆が何に姿を変えたの?」 P「豆まきの豆とに豆」。
<大豆が、豆まきの豆やに豆に姿を変えるとき、どんな工夫があるのか。>
A・Bのどちらが、学習意欲を高めるかは、実態を把握している担任教師が決めるといいです。
私ならBです。しかし、Bでも、もっと順序があります。
T1…3段落では、大豆が何に姿を変えたのだった?
Pn…豆まきに使う豆。と、に豆です。
T2…豆まきに使う豆を短くすると?
Pn…まき豆。豆まき用。豆。
T3…豆だと間違えると行けないので、まき豆にするよ。
T2…大豆が、まき豆やに豆に姿を変えるとき、工夫があるのか。
Pn…あるよ。あるよ。分かるよ。
T4…今日は、<大豆が、まき豆やに豆に姿を変えるとき、どんな工夫があるのか>を勉強しよう。ノートを出して、課題を書こう。
分かっている子だけを相手にして学習を進めるのではなく、全員を対象にするのなら、スモールステップを心がけることが大切です。
→おわり「8」段落…まとめ「このように」
7段落には4つの文(センテンス)が書かれています。筆者は必要だから文を4つに分けたのです。では、1文ごとに内容を確認してみましょう。
①「このように、大豆はいろいろな姿で食べられています。」
・姿を変える→工夫ですね。 工夫のまとめです。
②「ほかの作物に比べて、こんなに多くの食べ方が工夫されてきたのは、…略…栄養を含んでいるからです。」
・「から」です。←理由ですね。多くの食べ方が工夫されてきた理由が書かれています。
③「そのうえ、…略…ためでもあります。」
・「ため」でもあります。理由を追加しています。
④「大豆のよいところに気づき…略…驚かされます。」
・驚かされたのは、筆者「国分 牧衛氏」ですから、筆者の感想・考え・意見と言うことになります。
③「問い・問題文」と「答え」を手がかりに読む
④「実験」「観察」「考えたこと」に分けて読む
③については、「どうして、~でしょう」や「か」が明確に提示されていないため、全体を読む手がかりにはなりにくいと考えます。また、④についても「ウィルソン」みたいな実験観察が書かれていないので、この説明文では不採用とします。
以上が「素材研究」です。教材を教師自身が一人の読み手となって読んできました。では、指導書や児童用教科書には、この教材で、何をねらい、学習をどのようにすすめたらよいか。学習の進め方・仕方について、どのように示されているのでしょう。
2 指導書から探る。 3 児童用教科書から探る。 の2点について、考えていきましょう。
2 指導書から探る。
指導書を読んで、パソコンにデーターとして残すことが最適ですが、先生達は他教科も教材研究をしなければならないので、インターネット「光村図書HP」から「年間指導計画」をダウンロードし、データーを作成することをお薦めします。 指導案作成の場合は、特に、時間短縮になります。また、年間指導計画は年度ごとに更新されることがあります。指導書は高額なので毎年購入できませんがインターネットでは無料でデーターがもらえます。
(1)インターネット「光村図書ホームページ」
①「すがたをかえる大豆」については、次の通りです。
◇1 月 →「11」
◇2 単元名・教材名・他教材との関連☆
2 せつめいのしかたを考えよう ~すがたをかえる大豆~
◇3 時数 7読⑦
◇4 主な指導事項◎○・ 言語活動■ 学習指導要領との対応◆
◎中心となる語や文をとらえ,段落相互の関係を考えながら,文章の内容を的確に理解する ことができる。
◎内容を大きくまとめたり,必要なところは細かい点に注意したりしながら読むことができる。
■説明のしかたを知る
◆読(1)ア・イ・エ,伝国(1)イ(カ)
◇5 学習活動(時)
(1~2)
1 普段の食事ではどんな食材が多く使われているか調べ,調べたことを交流し合う。
2 教材文を読み,学習課題を設定し,学習の見通しをもつ。
(3)
3 「はじめ」「中」「終わり」で説明されていることを整理しながら,文章全体の組み立てをとら える。
(4~5)
4 段落の順序や中心になる文を確かめながら読む。
5 言葉の使い方に注意し,分かりやすい文の書き方について考えながら読む。
(6~7)
6 学習のまとめや言葉の学習をする。
7 興味のある本を選んで読む。
◇6 評価規準
【関】・文章の内容に関心をもち,文章構成を理解しながら読もうとしている。
【読】・中心となる文や大事な言葉に気をつけて音読している。(1)ア
・「問い」の形をとらない話題提示があることを理解し,中心文を確かめながら説明されてい ることを整理している。(1)イ
・「はじめ・中・終わり」の構成に注意し,中に書かれた具体例を整理しながら読んでいる。 (1)エ
【言】・文章中の表現や言葉に注目し,辞書を使って調べている。(1)イ(カ)
◇7 生活や他教科で生きる力/道徳や他教科等と関連する題材
【総合的な学習の時間】食育に関わる題材
【社会】→調べて説明する力
上記の年間指導計画からは、単元名、目標、時間などの情報を得ることができます。しかし、◇5学習活動を見ても、大ざっぱすぎて単元計画を立てることができません。そこで、児童用の教科書を参考にします。
3 児童用教科書から探る。
この単元は、7時限で学習する計画です。次の「例をあげて説明しよう~食べ物の秘密を教えます~」を含めた単元にする場合は、書く目標や6時限分の単元計画も必要です。同じようなゴールですが、まず「説明の仕方を考える」ことを学習し、その後に「例をあげて説明する」学習に取り組んだ方が、子ども達にとって、混乱しなくてよいと思います。
特に、「説明的文章を読む」学習は、とても大切です。冷静な読み・客観的な読みの姿勢を育てるためにも、大事にした学習です。
児童用教科書には、次のように「記載」があります。実態を把握した担任だからこそ、使えそうな<課題>や「発問」がないかを探ってみてください。
P26 リード文
② 説明の仕方を考えよう。
・何を取り上げて、どのように説明しているのでしょう。
・文章全体の組み立て方、段落ごとの書き方、文の書き方に注意して読みましょう。
P31「説明の仕方を考えよう」
・「すがたをかえる大豆」を読んで、初めて知ったことは何ですか。
・知っていたことはありますか。
・どのような説明の仕方でそのことが分かったのでしょう。説明の仕方に注意して読みましょう。
▼「すがたをかえる大豆」の、全体の組み立てについて考えましょう。
はじめ → これから説明する話題を大まかに示している。
な か → 「はじめ」に示した話題について、具体的な例をあげて説明している。
おわり → 全体をまとめている。
・「イルカのねむり方」「ありの行列」と違って、「はじめ」の部分に、文章全体にかかる「問い」が ありません。もし、問いを入れるとしたら、どんな問いが考えられるでしょうか。
・「中」では、具体的な例がいくつかに分けて書いてあります。ノートに整理して確かめましょう。
P32 ▼段落ごとの書き方を確かめましょう。
・「中」に、5つの段落があります。それぞれの段落の中では、何がどんな順序で書いてありますか。
・段落を1つ選んで、音読しましょう。どの言葉や文を強めて読むと、内容が分かりやすいでしょうか。
▼言葉の使い方や文の書き方について考えましょう。
・例をあげるのに、「一つ目は」「二つ目は」ではなく、「次に」「また」「さらに」が使われている理由は何でしょう。
・この文章には、「-でした。」「-ました。」で終わる文がほとんどありません。どうしてだと思いますか。「-でした。」「-ました。」は、どういうときに使いますか。
▼本文中の写真は、何のために用いられていると思いますか。
▼筆者の説明の仕方には、どんな工夫があるでしょう。みんなで考えを出し合って確かめましょう。
「たいせつ」
ふつう、段落は、いくつかの文が集まってできています。段落には何が書いてあるかを素早くつかんだり、短くまとめたりするときは、その段落の中で一番中心となる文を見つけましょう。
くり返し出てくる言葉や、問い・題名とつながりのある言葉などに気をつけると、中心になる文を見つけやすくなります。
P33 ☆「すがたをかえる大豆」とのかかわりで、もっと知りたくなったこと、他に知っていることがあったら、発表しましょう。
「言葉」
▼「すがたをかえる大豆」には、「いる」「にる」のように、人が大豆に手を加える時の言葉がたくさん出てきます。探して、ノートに書き出しましょう。
「本は友達」
食べ物について書かれていた本を読んでみましょう。
児童用教科書に載せてある課題は、考えさせたいことや読み取ってほしいこと、気づいてほしいことなどの意図があるものです。
算数の教科書であれば、教科書の問題を使って課題を設定しやすいのですが、国語の場合は、課題に流れがないため、唐突になりやすすく学習意欲を高めることにつながりにくいです。 そこで、「年間指導計画の学習活動」+「児童教科書の課題」+「学級の実態」を考え合わせ「単元計画」を立てるのです。
3.単元計画を考えよう。
1.単元名
・ポピュラー せつめいのしかたを考えよう ~すがたをかえる大豆~
・ユニーク せつめいのしかたを~すがたをかえる大豆~から学ぼう。
2.目標については、
◎中心となる語や文をとらえ,段落相互の関係を考えながら,文章の内容を的確に理解することができる。
◎内容を大きくまとめたり,必要なところは細かい点に注意したりしながら読むことができる。
■説明のしかたを知る
【関】・文章の内容に関心をもち,文章構成を理解しながら読もうとしている。
【読】・中心となる文や大事な言葉に気をつけて音読している。
・「問い」の形をとらない話題提示があることを理解し,中心文を確かめながら説明されていることを整理している。 ・「はじめ・中・終わり」の構成に注意し,中に書かれた具体例を整理しながら読んでいる。
【言】・文章中の表現や言葉に注目し,辞書を使って調べている。(1)イ(カ
以上を参考にして、設定してください。
3.展開計画
(1)第一次…教材との出会い・学習計画
1 普段の食事ではどんな食材が多く使われているか調べ,調べたことを交流し合う。
2 教材文を読み,学習課題を設定し,学習の見通しをもつ。
・「すがたをかえる大豆」を読んで、初めて知ったことは何ですか。
・知っていたことはありますか。
(2)第二次…内容の読み取り
3 「はじめ」「中」「終わり」で説明されていることを整理しながら,文章全体の組み立てをとらえる。
・「すがたをかえる大豆」の、全体の組み立てについて考えましょう。
はじめ → これから説明する話題を大まかに示している。
な か → 「はじめ」に示した話題について、具体的な例をあげて説明している。
おわり → 全体をまとめている。
・「イルカのねむり方」「ありの行列」と違って、「はじめ」の部分に、文章全体にかかる「問い」が ありません。もし、 問いを入れるとしたら、どんな問いが考えられるでしょうか。
・「中」では、具体的な例がいくつかに分けて書いてあります。ノートに整理して確かめましょう。
4 段落の順序や中心になる文を確かめながら読む。
・「中」に、5つの段落があります。それぞれの段落の中では、何がどんな順序で書いてありますか。
5 言葉の使い方に注意し,分かりやすい文の書き方について考えながら読む。
・段落を1つ選んで、音読しましょう。どの言葉や文を強めて読むと、内容が分かりやすいでしょうか。
(3)第三次…まとめ・次単元へのつなぎ
6 学習のまとめや言葉の学習をする。
・例をあげるのに、「一つ目は」「二つ目は」ではなく、「次に」「また」「さらに」が使われている理由は何でしょう。
・この文章には、「-でした。」「-ました。」で終わる文がほとんどありません。どうしてだと思いますか。
「-でした。」「-ました。」は、どういうときに使いますか。
▼本文中の写真は、何のために用いられていると思いますか。
▼筆者の説明の仕方には、どんな工夫があるでしょう。みんなで考えを出し合って確かめましょう。
7 興味のある本を選んで読む。
※ 最近「平行読書」で時間短縮をねらっているようですが、「読む目的(食べ物の秘密を教えます)」を明確してから読む方が、意欲的に短時間で読めると和手史は考えます。
以上を参考にして、単元計画を考えてください。効果的なマニュアル的な単元はありません。ご自分の学級の子ども達の実態を加味した単元計画をご自分で考えることが、「教師力の向上」につながります。
苦労して獲得したものは身に着き、楽して獲得したものはすぐに手を離れるのです。ご自分で考えてみてください。
平成25年7月26日(金)に、若い教師と教材研究をします。その先生の悩みなどを参考にしながら、「今後、どんな教材研究をすれば良いか 」「単元計画を立てる場合、どんなことに注意すれば良いか」などについて、掲載していきたいと考えています。
しばらくお待ちください!
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