オフィス「和み」

ネットで「小学校教育」を支援・助言します。

子どもへの接し方
このエントリーをはてなブックマークに追加

自己防衛本能の理解

自然界の動物の場合
光村図書「国語2年上・どうぶつ園のじゅうい」P110に次のような文があります。(原文通りではなく漢字を使っています)
 動物園の動物は、犬や猫などのペットと違って、もともと、自然の中で暮らしていました。自然の中では、動物達は、弱っている姿を見せません。見せると、敵に襲われてしまうからです。

自然界の動物達は、「敵に自分の弱点を見せない。」という1つの自己防衛本能をもっています。

友人の場合
友人の自己防衛本能を次の会話から、理解してください。
・妻→「どうして、昨夜は、あんなに遅かったの?」
・夫→「俺は帰りたかったけれど、和みオーナーの山下が、もう一軒つきあえ。なんて言うから、したかなく…」


失敗につながった原因は、自分ではなく友人にある。という「相手のせいにする」という1つの自己防衛本能です。

子どもの場合
では、子どもの自己防衛本能とは、どんなものなのでしょうか。学校でトラブルがあると、子どもがよく口にする会話から、考えてください。
・先生→「Bさん。どうして、Aさんを押したの?」
・子A→「私は、何もしていないのに、Bさんが…。」
・先生→「Aさんの話は、Bさんの後に聴くね。」「Bさん。どうして、Aさんを押したの?」
・子B→「…。」
・先生→「お話ししないと、BさんがAさんを押した訳が分からなくなって、Bさんだけが悪くなるよ。」
・子A→「私は何もしていません。」


子B、「都合の悪いことは黙ってしまう。」という沈黙の自己防衛本能です。子Aは「何もしていない。」という自己防衛本能です。
真相は、次の通りでした。
 1限目の休み時間に、AさんがBさんに「長休みに、一緒に遊ぼう」と誘いました。Bさんは「いいよ。」と言い、長休みを楽しみにしていました。しかし、長休みになると、AさんはCさんと遊ぶことにしました。AさんはBさんと遊ぶ約束をしていたことを忘れたようでした。楽しみにしていたBさんは、Aさんに「一緒に遊ぼう。」と言ったのですが、Aさんは「Cさんと遊ぶ。」とBさんに言いました。それで、BさんはAさんを押したのです。
 学校は教科の勉強ばかりではなく、人間関係も勉強する場です。だから、「誰が悪いのか?」ではなく、「なぜ、そんなことになってしまったのか」を教師が間に入って、学習させるのです。大切な学習ですが、とっても時間がかかります。実際に、このAB両者の話を聴き終えるまでに、大変な時間を要したことを付け加えておきます。
真相がはっきりする前に二人は仲良しに戻っていました。 
 大変忙しい学校生活になりました。教師は「連絡帳の返事書き」「テストの丸付け」「ノートのチェック」「ドリル・作文・読書記録」などへのコメントなど、子ども達のために限られた時間内で大量の仕事をこなしています。だから、ゆっくりと子ども達の言い分を聴く時間の確保が、今の教育現場「学校」で薄れてきているのです。子どもと向き合う時間の確保とは、休み時間に子どもと遊ぶだけではなく、子ども達の言動を真正面から受けて、話を聴き、次への一手を授けるための時間なのです。確保してあげたいですね。



子どもへの接し方

自立の必要性  坂本 昇一氏の理論を参考に
「小さい時は、よく言うことを聞いたのに、だんだん言うことを聞かなくなる」と、保護者が悩むことがあります。それは、小学校6年間の子ども達の姿の顕著な例でもあります。
子どもが確実な発達をとげるために、それぞれの発達段階で着実に身につけておかなければならない課題があます。それを発達課題と言います。
<乳  児  期>………「信頼感」
<幼稚園時代>………「自立感」
<小学校時代>………「活動性」
<中学校時代>………「自発性」
 小学生での人格形成上の発達課題としては、低学年では「自立感」で、中学年・高学年では「活動性」です。

 乳児期に「信頼感」を身につけることのできた子どもは、幼児期から少年期のはじめにかけて、「自立感」を発達課題にして学習しなければなりません。それは、幼稚園のころから小学校低学年のころと考えています。
 この時期の子ども達は、自分の全ての行動が、自分自身のものであることを確かめようとします。もちろん、未熟なので思うようにならないこと(失敗経験)もあります。また、思うようになることやうまくいくこと(成功経験)もあります。この成功経験と失敗経験のバランスが、子どもの成長に影響します。

坂本氏は次のように書いています。

a)成功経験>失敗経験
 ・成功体験が極端に多い場合→「小児万能感」が身についてしまい、自
  己中心的で感情的で、すぐいらいらする子どもになりがちです。
b)成功経験<失敗経験
 ・失敗体験が極端に多い場合→「劣等感」を育ててしまい、自分は駄目な
  人間だと思うようになり自信のない子どもになりがちです。
c)成功経験=失敗経験
 ・バランスがとれた生活が多い→子どもは自立感を獲得して、思いやりと
  意志力の強い子どもに育つと言われます。

 家庭生活でも学校生活でも、子どもが自分でやろうとする時、失敗しそうなことはあらかじめさせないようにしたり、大人が手をかしてやったり、子どもから失敗経験をうばってしまう状況が多いのではないでしょうか。発達課題の克服から考えると、学校教育ではまさしく自立「他のものからの援助や管理を受けないで、子ども自らが行う」が求められます。


 
理科を参考にして考えてみましょう。
 その方法では失敗すると教師が分かっている実験でも、子ども達にさせてみることが大切な配慮です。一度失敗した実験から再度考えて成功したとすれば、バランスの良い経験になるということです。ただし、怪我や事故については、最初から排除することは当たり前です。何が怪我や事故につながるのかを把握するためにも、教材研究としての教師実験が必要です。



今度は、国語科の例で考えてみましょう。
 ①ワークシート
  ワークシートは書き込んで完成すると勉強したように見えます。単元を終 えて掲示する時には、成功体験のような気になります。しかし、そのワーク シートは、記入観点もスペースも全て教師が与えていると、
・Pn…先生。何を書けばいいのですか? どこに書けばいいのですか?
・T…今から、ワークシートの書き方を説明しますから。
  教室でこのような会話がかわされます。確かに、時間数が限られている ことは分かります。しかし、この活動で「自立感」を味わえる子は、我が教  室に何人いるのかを考えてほしいのです。

 ②教師の発言・発問
  <どうして、スイミーは、だんだん元気をとりもどせたの?>

P1…くらげとかいせえびとか。を見たからです。
P2…魚たちも見ました。こんぶやわかめも見ました。
P3…うなぎやいそぎんちゃくも見ました。
T1…そうだね。みんなが言う通り、すばらしいものをいっぱい見たのだね。

 教科書p50には
「海には、すばらしいものがいっぱいあった。おもしろいものを見るたびに、スイミーは元気を取りもどした。」
と書いてあります。子ども達の発言は「スイミーが見たもの」を上げています。それもたった3名です。
 T1の発言には「すばらしい」とありますが、3名の子誰一人として「すばらしい」と発言していません。これは、海の中のすばらしいものとおもしろいものを混同しているからです。文章を正確に読んでみると、「おもしろいものを見るたびに…」と叙述にあります。

 あなたがその場の担任なら、P1~P3を受けて、どのように発問しますか?

A…3名は、何を見たからといったのかな?
B…3名は、何だから元気を取りもどすことができた。と言ったのかな?
C…3名が同じ訳としてあげたことを聴けた人はいますか?
D…他の人は、どうして取りもどせたと考えたの?

 教師の瞬時発問ですから、実際の雰囲気(3名が発言するまでの、他の子の手の上げ方など)が分からないので、適切な発言・発問を生み出すのは難しいと思います。ですが、子ども達に自立感を味わわせるためには、子ども達が言ってもいないことを教師から提示してしまうことは参考にはなりません。一見子ども達が自由に発言する学級に見えても、国語の力(特に、読む力を育てる)を育成する授業には至っていない授業があります。
 3名の「言おうとすることを聴く」学級集団、「私は・僕は・同じです・付け加えます・他にあります等」関わり合う学習集団、そんな姿が国語教育に必要なのです。

 私はCです。
T1…今言った3名が訳としてあげたこと、聴けましたか?
P4…くらげとか、いせえびとか、魚たちとか、こんぶやわかめとか、うなぎやいそぎんちゃくを見ました。と言いました。
Pn…シーン。
T2…つまり、同じなのは? 
Pn…シーン。
T3…P1さんもう一度言って。P2さんも、P3さんも。
P1…くらげとかいせえびとか。を見たからです。
P2…魚たちも見ました。こんぶやわかめも見ました。
P3…うなぎやいそぎんちゃくも見ました。
T4…だから、P4さんはさっき言ったのだね。元気がなかったスイミーが元気を取りもどした訳を3名が同じ言葉で言いましたね。訳としてあげたのは?
Pn…分かった。「見たから」と言いました。
T5…3名とも「見た」と言ったかな?
P123…はい。
T6…3名は何を見たから元気を取りもどせたと、言ったのかな?

 授業としては、これからがおもしろく、そして、課題に対して明確になっていくのですが、話題としては逸れ気味なので修正したいと思います。
 教師が子ども達の活動を制限したり、数人の意見をみんなの意見としたり、教師の都合のいい発言だけを取り上げたり・板書したりすることは、「自立感」や「自立心」を育てることにならないことを分かってほしいのです。
 では、どうすればよいか?
 それを自分のものにするために「研究と修養」が必要な教育公務員なのです。このオフィス「和み」が
その一助となれば幸いです。

自立から自律へ
5年生担任の学級開きで、子ども達に次のような話をしました。
「君たち一人一人、つまり、自分に命令するのは、誰でしょうか。次の3つから選んでみてください。
①先生。  ②お家の人。  ③自分。
全員が目を閉じて、黙って手を上げてもらいます。」と…。 
 結果は子ども達全員が③に手を上げました。
「全員が③に手を上げましたが、先生も君たちと同じで、自分に命令するのは自分だと思います。先生が手を上げなさいと君たちに言っても、君たち自身が自分の筋肉を自分の意志で動かさないと、手は上げられませんね。今日から始まる5年〇組での生活で、自分に命令できる自分に益々成長してください。」 
 その2週間後の第1回学級懇談会で、母親から「先生。家の子に宿題をしなさいと言ったら、自分に命令するのは自分だから、今しない。と言って、宿題していないのですが…。」 と相談を持ちかけられました。「分かりました。明日でも、子ども達に話してみます。自分勝手な命令ではなく、自分を律することができる命令ができるように。」 そのお母さんの子は宿題を忘れていませんでしたが、教師の投げかけたことを子どもが自分勝手に解釈していると思ったので、「自分勝手と自立」や「自立と自律」の違いについて子ども達と考えました。その学校の校訓に「自律」という文字があったことも、考えさせるきっかけになりました。
・自分勝手…他人のことはかまわないで、自分だけに都合がよ         いように振る舞うこと。
・自立…
他のものからの援助や管理を受けないで、自分自らが     行うこと。
・自律…自分の決めた規律に従って、自分自身をコントロールす      ること。
 5年生の子ども達にとって4月は4年生の延長です。ですから、母親からの命令ではなく、自分の命令で宿題をしていることを誉めることから始めました。「自分勝手ではなく最初は自立でいいけれど、自分をコントロールできる自律へ成長しよう」と、目標のステージを上げることになりました。
 小学校高学年、特に、6年生には「自律」を望みたいですね。小学校での自律は難しいですが、「自分自身をコントロールできることが大切だ」と意識しながら学校生活を過ごすことを大切にしたいですね。

活動性を確保する学習
 誰が活動するのか?  子ども達「一人一人」!

子ども達一人一人の活動性を確保するために、国語では「子ども達自らが、話す・聴く・読む・考える・書く」活動を行うことです。
 山本 五十六元帥は、「やって見せ、言って聞かせて、させてみて、誉めてやらねば人は動かず」と言いました。教育に携わっている関係者は、この言葉を常に意識してほしいと願っています。
  ・
やって見せ、お手本を見せる。
  ・
言って聞かせて、やり方を教える。
  ・
させてみて、なんとかやらせてみる。  
  ・
ほめて、努力を認めその気にさせる。
 人は、自分に自分自身から命令して生活しています。ですから、ただ言うだけでは、なかなか動いてくれません。教師が望むように子どもを動かすためには、本人をその気にさせることが必要です。
 
 そのためには、子どもの心を動かす努力が大事なのです。教師の努力の第一は、教材研究です。教材の解釈はもちろん。話す・聴く・読む・考える・書くの、どの活動を重視するのか。そのために、子ども達の気持ちをどのような方向にもっていけばよいのか。また、子ども達に考えさせることは何で、教師が指導するのは何か。などなど、授業が待ち遠しくなる教材研究が重要になってきます。
 限られた時間で、教材研究をすることは大変難しいことです。そんな時、そばにいる信頼できる教師から指導してもらうことも大切です。




学校経営で考えると
 教師は、担当学校の子ども達を成長させるために、自分に自分自身から命令して生活しています。ですから、校長が言うだけでは、なかなか動いてくれません。校長が望むように教師を動かすためには、教師本人をその気にさせることが必要です。
 そのためには、教師の心を動かす努力が必要です。校長の努力の第一は、学校経営ビジョンの設定です。学校経営ビジョン設定が、次のような段取りを踏んであればよいと考えています。

① 調査や研究を基にした
            課題
、目標、方向性、ビジョンの設定→

② 豊富な実践・経験に裏付けされた
                     計画
、構想、案の提示→

③ 率先垂範する校長の人間性に裏付けされた
                        
実践、行動、展開→

④ 家庭や地域に信頼されるアンケートや点検の実施  →

⑤ 透明性を確保し公開を前提に達成部分を明確にした
                           次への一歩 →

 

 以前、学校評議員の一人から、「校長先生が替わると、学校が変わってしまうのは、有り難くない。校長先生の性格や考え方も含め、人格は異なっているのは分かるが、学校は校長先生の私物ではない。」とね。手厳しい意見でした。
 だからこそ、「R(リサーチ)」が必要なのです。実態・実情を無視したビジョンこそが、私物化のスタートだと考えます。
トップページ~