オフィス「和み」

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大造じいさんとガン
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 Ⅰ 光村図書「年間指導計画」によると

1.単元名~教材名~
6 作品を自分なりにとらえ,朗読しよう ~大造じいさんとガン~
2.時数(10月~11月)
8時限「読⑥+書②」
3.指導目標◎○・  言語活動■  他教科・他教材との関連☆  学習指導要領との対応◆
◎自分の思いや考えが伝わるように音読や朗読をするとともに,優   れた叙述について自分の考えをまとめることができる。
・書いたものの表現の効果などについて確かめたり工夫したりするこ とができる。
■作品を自分なりにとらえて朗読する。
◆読(1)ア・エ,書(1)オ,伝国(1)イ(カ)
4.学習活動
(1時限)
①全文を通読し,単元名・リード文から学習の見通しをもつとともに,「朗読」について確認する。

(2時限)
②作品が,大造じいさんの気持ちに寄り添って書かれたものであることを理解し,残雪の様子や行動、大造じいさんの心情を場面ごとに書き出して整理する。
③「情景」について理解し,それを踏まえ,1の場面での大造じいさんの残雪に対する見方の変化を読み取る。

(3時限)
④2・3の場面での大造じいさんの残雪に対する見方の変化を読み取る。

(4時限)
⑤4の場面での大造じいさんの心情を読み取り,全体を通して大造じいさんの人物像をまとめる。
 
(5ー6時限)
⑥自分の好きな場面の朗読のしかたを考え,朗読を発表し,感想を伝え合う。

(7~8時限)
⑦残雪とハヤブサの戦いの場面を読み,短文が続く書き方の工夫について話し合う。

⑧教科書P123の例を参考に題材を決め,動きを短文を続けることで書く書き方の練習をする。
5.評価規準
【関】文章から読み取ったこと,自分なりに感じたことや考えたことをもとに,朗読しようとしている。
【読】自分が文章から受け取った印象を大事にして音声化している。
   ・登場人物の心情を,会話や心情表現,行動を表す文・語句に着目して読んでいる。
   ・場面についての描写など,独特の表現と作品全体の雰囲気との関係を考えている。
【書】・表現の効果である技法に関する知識をもち,書いている。
【言】・言葉や表現に気をつけて,様子を想像している。
6.生活や他教科で生きる力/道徳や他教科と関連する題材
【図画工作】
→感じたこと,想像したことなどから,表したいことを見つけて表す力


 Ⅱ 教科書によると

P102 リード文
6 作品を自分なりにとらえ、朗読しよう
すぐれた表現を味わいながら読み、自分なりの考えや思いをもとう
P120「大造じいさんとガン」を、朗読で表現しよう。
0.朗読の意味…自分なりに考えたことや感じたことを音読に反映させて読むこと
1.「大造じいさんとガン」を丁寧に読もう
(1)大造じいさんの気持ちに寄りそって書かれている。

(2)「残雪」の様子や行動について、「大造じいさん」はどう思ったのか、「大造じいさん」の心情はどう移り変わっていくかを読んでいこう。
学習課題の中心は、
「残雪に対する大造じいさんの心情の変化」である。


(3)「大造じいさん」の「残雪」に対する見方が、大きく変わった場面はどこだろう。理由とともに出し合って考えよう。
最初の見方・大きく変わる・最後の見方の心情を読む
→変化が分かる


(4)物語で、登場人物の心情と響き合い一体のものとなった風景や様子を「情景」という。



(5)この物語では、動物のしぐさや人間の動作、そのときの様子が、細かく丁寧に描かれている。

(6)「大造じいさん」は、どんな人物だろうか

(7)自分の好きな場面は見つかっただろうか。好きな場面を理由とともに発表しよう。

(8)大切
 ・物語では、人物の行動、そのときの人物の様子、その場所の様子が、目に見え、耳に聞こえるように生き生きと描かれている。それらの優れた表現によって、読者は直接書かれていない人物の深い心情や性格についても、想像することができる。
2.好きな場面を朗読しよう
(1)物語の内容や特色、自分の感動にふさわしい朗読の仕方を考えよう。何人かで互いに聞き合い助言しよう。

(2)朗読を発表し合おう。友達の発表を聞いたら、自分のとらえ方と比べ、感想を伝う合おう。

(3)書く このような書き方で、何かの動きを描いてみよう。
 ①体育の時間に、球技などしている場面
 ②慌ただしく出かける場面               など。

(4)読書 動物を描いた物語です。どれを読んでみたいですか。



 Ⅲ 授業づくりのために

1.ゴールの設定
(1)指導目標◎・、言語活動■
 ◎自分の思いや考えが伝わるように音読や朗読をするとともに,優れた叙述について自分の考えをまとめることができる。
 ・書いたものの表現の効果などについて確かめたり工夫したりすることができる。

 ■作品を自分なりにとらえて朗読する。

(2)評価基準
【読】自分が文章から受け取った印象を大事にして音声化している。
   ・登場人物の心情を,会話や心情表現,行動を表す文・語句に着目して読んでいる。
   ・場面についての描写など,独特の表現と作品全体の雰囲気との関係を考えている。
【書】・表現の効果である技法に関する知識をもち,書いている。
【言】・言葉や表現に気をつけて,様子を想像している。

(3)教科書のリード文
  作品を自分なりにとらえ、朗読しよう
すぐれた表現を味わいながら読み、自分なりの考えや思いをもとう

(4)ゴールの設定朗読「内容を読み取る必要がある」
2.中心課題
(1)教科書 「大造じいさんとガン」を丁寧に読もう
 ・朗読の意味…自分なりに考えたことや感じたことを音読に反映させて読むこと
 ・大造じいさんの気持ちに寄りそって書かれている。
 ・残雪」の様子や行動について、「大造じいさん」はどう思ったのか、「大造じいさん」の心情はどう移り変わっていくかを読んでいこう。
  
学習課題の中心は、
<残雪に対する大造じいさんの心情の変化>である。


 ・「大造じいさん」の「残雪」に対する見方が、大きく変わった場面はどこだろう。理由とともに出し合って考えよう。
 
学習課題を解決するためには、
「最初の見方・大きく変わる・最後の見方」を読む。


(2)問題点…6時限で読み取れるか?
 ・教材との出会い「ゴールを設定し、通読し、感想をノートする」
 ・学習計画を立てる「感想を話し合い、あらすじをつかみ、学習課題を設定する。
 ・ 朗読発表は最低1時限必要

※上記の学習活動のために3時限使うと、読み取りが3時限となる。6時限では到底無理なので、授 業の終わりに「ノートに考えを書く」として2時限をプラスして「8時限」と設定する。8時限としても「読む時間は5時限」となる。どうしても、「+α」が必要となる。
3.教材文「大造じいさんとがん」が持っている魅力
(1)情景描写
・物語で、登場人物の心情と響き合い一体のものとなった風景や様子を「情景」という。
・物語では、人物の行動、そのときの人物の様子、その場所の様子が、目に見え、耳に聞こえるように生き生きと描かれている。それらの優れた表現によって、読者は直接書かれていない人物の深い心情や性格についても、想像することができる。 
※心情は「行動」「会話」から伝わってくる。さらに、「情景」からも投じよう人物の心情を読み取ることができることを、この学習で子ども達が実感できる。

(2)「自分なり」と一斉学習
・「朗読の意味」→自分なりに考えたことや感じたことを音読に反映させて読むこと。
 ・「自分なりに考えたことや感じたこと」を全面に出し過ぎると、課題解決・問題解決での一斉学習は成立しない。
※「自分なりに考えたことや感じたこと」は、「自分の考えを持つ」場で必要である。自分なりというのは、「既習学習や生活経験(感じ方や考え方)」が反映されるものである。

A 自分の考えを持つ(ノートに書く)。
B 一人一人の考えを出し合う。
C 出された考えの類似点・相違点を明確にする。
D 課題についての解決作を明確にする。
E 課題についてまとめる(ノートに書く)。

D場面では、「自分なり」が「明確化・一般化・抽象化」に変化するのが学習である。一人一人が自分の考えを出し合って、課題を解決していく過程で活用力が育つ。
(3)授業での具体例
1章 <次の日も大造じいさんは、ガンを捕れると思っていたか?>

T1 捕れると思っていたという人は手を上げて。捕れないと思っていた人は手を上げて。今日は大造じいさんになって、次の日も捕れると思っていたかをはっきりさせよう。

※「絶対に捕れると思っていたと言う人」という言葉は、読む意欲を高める効果がある。

A 課題について、自分の考えをノートに書く


T2 一人一人の考えを聴かせて。

B 一人一人の考えを出し合う。
C 出された考えの類似点・相違点を明確にする。


P1 私は「捕れる」と思っていた考えです。理由は、教科書P106上から2行目に「たかが鳥のことだ、一晩たてばまた忘れてやってくるに違いない」と大造じいさんは考えていますね。「違いない」と自信をもつているからです。

Pn 同じです。

T3 同じ考えの人は自分の言葉で聞かせて。

P2 P1さんと同じで「忘れてやってくるに違いない」と考え、「昨日よりもっとたくさんのつりばりをばらまいておきました」と書いてあり、捕れると思っていなかったら「昨日より少なかった」と思います。

P3 僕も前の二人と同じで、捕れるです。「大造じいさんは、たかが鳥と」言っていますね。「たかが鳥」と馬鹿にしているので、捕れると思っていたと思います。

P4 私はP106の5行目でも「捕れると思っている」と言えます。「同じ時刻にでかけて行きました」と書いてあります。心配なら「少しでも早く行く」と思うのですが、「たかが鳥のことだ」と忘れると思っているから「同じ時刻」にしたのだと思います。

Pn 同じです。

T4 P106の5行目までは、「たかが鳥、忘れて、昨日と同じように捕れる」と思っていたという考えだね。

P5 8行目に「はてなと首をかしげました」と書いてあるから、捕れる自信が少しはなくなっ たと思います。捕れると思っていたら「やっぱり」と思います。

Pn 同じです。(同じ考えの人の考えを聴く)

T6 大造じいさんは、5行目までは捕れると思っていた。自信があった。でも8行目では自信がなくなった。捕れないかもと思っている所まで、気持ちを読むことができました。

D 課題についての解決作を明確にする。

T 間の6行目と7行目は、<捕れる自信ありかな、なしかな?>

P6 7行目は「姿を現すと、ガンの大群が飛び立った」のだから、昨日と違いますね。昨日はつりばりにかかったガンがいたから、他の鳥はいませんでしたね。だから、「はてな」と思ったので、7行目は捕れないに入ると思います。

Pn 深い。するどい。よく考えたね。分かりました。

T7 <6行目の大造じいさんは、どっち>。 一人で駄目なら、相談もいいね。

※ ようやく「6行目」の情景描写にぶつかりました。子ども達が「6行目」から大造じいさんの心情を考えようとしている場面を設定することが、「情景描写の理解」につながるのです。教師が、「実は…」と説明したのでは子ども達の心に入り込みません。つまり、体験していない物は自分の物ではないのです。

P7 教科書の121Pの上の段に、「物語で、登場人物の心情と響き合い一体のものとなった風景や様子を情景という。」の後に、6行目の文章が書いてありますね。たから…何か大切だと分かります。

※ 生きる力を育てるための課題解決学習ですから、この後は、教師が主導権を持たずに、子ども達が発見したように実感させるために関わる必要があります。

<美しく輝いて見えたのは、誰かな?>
<大造じいさんには、どうして美しく、しかも、輝いて見えたのだろうね>

このように具体的な発問が必要ですね。そして、「情景描写」ということを板書する。 
(4)ゴールのために
<次の日も大造じいさんは、ガンを捕れると思っていたか?>
の学習でのまとめには、

「情景」でも登場人物の気持ちを想像することができることが分かった。情景描写という。などと、ノートに書かれる。

このような学習を体験したからこそ「心情が入るように音読する」=朗読できる子どもが育つと考えています。


 「教育は人となり」と言われるように、「授業も人となり」です。ですから、教師の細やかな子ども達に対する関わりや発問の強弱、間、聴く姿勢などなど、細部にわたって解説することはできませんが、私流の授業展開例を記します。
 なお、授業は子ども達の読みの程度を把握しながら、子ども達の意識に沿って「読める部分から読めない部分」へ向かって、展開するようにしてください。子どもとつくる国語の授業をめざして、頑張ってみてください。

 


Ⅳ 授業展開の一例

第一次
①教材との出会い
<大造じいさんとガンで、何を勉強するの>→ゴールの設定
・読んで「初発の感想」をノートしよう。

(予告)明日は、一人一人の感想を出し合い、課題と学習計画を立てよう。


②学習計画をたてる
<一人一人の感想を出し合い、課題と学習計画を立てよう。>
・物語のあらすじをつかむ。
・版書には、章番号・大雪に対する大造じいさんの気持ちをキーワードで残す。
・章ごとの作戦名を考え、黄色で残す。
・感想の中心は、山場の「対決」から出される。

残雪に対する感情・気持ち
・最後「ガンの英雄よ」←明確である「本人が言っている」
・最初「?」 ・変わった所は「対決」の場面

中心課題 <残雪に対する大造じいさんの気持ちを読み取ろう>

次時の課題を「本時の終盤に予告する」。
第二次
①<初めの残雪に対する気持ちは?>
「なかなかりこうなやつ」←馬鹿にしている 「たかが鳥」
「いまいましい」←職業
・一羽のガンも手に入れることができなくなった。
ウナギ釣り針作戦では、捕れたの? → 1羽だけれど捕れた。


②<捕れる自信は、あったのか>←特別な作成


③<次の日も、捕れる自信はあったのか>←情景描写


難題④<どうして、捕れなかったのか>←大造じいさんの心の油断を読み解く。この課題で、学習が成立する学級は、学習集団として成長している。
集団→学級集団→学習集団へと成長する。
オフィス「和み」集団作りページを参照ください。


⑤<最初の「なかなかりこうなやつ」から、変わっかな?>

1章の始 め→なかなかりこうなやつ
終わり→どうしてなかなか、たいした知恵を持っている

2章のタニシ作戦の後は?
2章 直接書いてない。「ううん。」とうなってしまいました。

1章の「ううむ。」と後の解説を参考にして、じいさんの気持ちを解説文を書く(書くこと)」


短時間を望むのなら<2章のタニシ作戦の後は?>と問いかける。

活用力をつけたい場合は、1章の学習を繰り返す。
⑥<タニシ作戦で、捕れる自信は、あったのか>
・何ページの何行目まで、自信はあったのか?
「会心の笑み」「暁の光が、すがすがしく流れ込んできました」←情景描写


⑦<おとり作成は、捕れる自信はあったのか?>


⑧<どうして、再び銃を下ろしたのか>←強く心を打たれるじいさん


⑨<4章では、残雪に対して、どう思っているの>
・ガンの英雄
・堂々と戦おう→ライバル・生きがい
・卑怯なやり方とは?
第三次
大造じいさんの気持ちの変化が分かるように、朗読会を開こう。
・参観日にお披露目する。←(学習前の音読を残しておく)
・CDとして残す←(学習前の音読を残しておく)

学習の成果を実感させるために「学習前の音読と比較する」
・初回の音読は、子ども達に内緒で録音する方がよい。子ども達の自然な「音読」を聞きたいと願うから。
・「音読」→「朗読」の違いは、120Pで理解させておかなければならない。「自信たっぷりの言い方」「小馬鹿にした言い方」など、大造じいさんの気持ち・心情が、声によって表現できるように。
時間の確保
・高学年は、本時の終わりに次時の予告をする。と同時に、課題・問題について「自分の考え」を宿題として持ってくるように習慣づける。
・課題に対する一人一人の考えをノートに書く時間を、授業の中で確保しようとすると、話し合い「話す・聴く・考える・相談する等」の時間が短くなる。




 Ⅴ 授業は「業」を「授ける」と書く

「業」とは「なすべきこと。仕事。わざ。」である。

「授ける」とは、「目上の者が目下の者に特別に与える。師が弟子に教える。」


 教師は子ども達に、「この単元で、なすべきことは何か」を明確にし、「どのように授けるか」を十分に吟味するために、教材研究が重要なのである。

「大造じいさんとガン」の授業が楽しみになって頂くと嬉しいですし、この教材研究の考え方を参考にして、自分流の教材研究の仕方を編み出してくれることを期待しています。

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