子どもを動かす言葉
団塊の世代が教育現場を卒業し、若い教師が職場に増えています。
平成25年秋頃、JR北海道の線路未点検が問題になりました。未点検の数の多さに驚いていた中、その原因究明の一つとして、次のようなコメントがテレビで流れた。
・JR北海道は赤字路線が多く、新規採用する余裕がなく、KNOW-HOWが引き継がれなかった。
このコメントを聞いて、テレビ用語で表現すると「じぇ・じぇ・じぇ・じぇ」でした。「この文明社会で、技術的なKNOW-HOWが受け継がれないなんて、いったいどうなっているの?」と不思議に感じました。
ですが、考えてみれば教育界でも教育の伝承が危惧されている現状があります。JR北海道が陥った危機から、教育界が学ばなければならないのは、「経験豊富な先輩教師の指導法・教育観を受け継ぐ機会を少しでも持つことだ」と考えるのです。
その先輩とは、「昭和55年の指導要領改訂以前から教師をしていた先輩達です。それは、「詰め込み教育」→「ゆとり教育」→「生きる力教育」→「学力重視教育」を体験し激動の教育界を歩んできた存在だと考えるからです。
前段が長くなりましたが、ここでは「教師の言葉遣い(心構え)」について、共に考えてみましょう。「子ども達が意欲的に活動する言葉かけ」や「子どもを動かす言葉かけ」を体得できるといいですね。
- 注意言語は、意欲を?
- a 姿勢が悪いよ。
b 足はぺったん。背筋はぴーん。頑張ろう。
c いい姿勢の人がいるね。いい姿勢の人が増えたね。
d ぺったん・ぴんが、できる子がいるね。増えたね。
日常的には「a」が多いようです。いかがでしょうか。
いずれにしても子ども達に姿勢を意識してほしいと願う言葉かけです。ですが、注意はマイナス言語です。マイナス言語ではテンションが上がりません。言葉かけがきっかけ「パブロフの犬(「条件反射)」になるのであれば、プラス言語をお勧めします。特に、低学年は「c・d」で、子どもの意欲は間違いなく高まり、気をつける子に成長します。大切なことは、教師から「○○さんの姿勢はいいね」等、評価を途切れさせないことです。
私が尊敬するS小学校I先生は、集会時の姿勢をメモって評価していました。一定の基準で常に評価されると「価値観」も育つのです。
- 「やり直し」は、やる気を?
- 「初めての活動」は未経験です。最初からできれば学習の必要性はなくなります。できないから学習するのです。ですから、必ず 「やり直し」の理由を伝えてください。
(例)教室移動で並ぶ時、「AさんとBさんが廊下で声を出し、隣の教室に迷惑をかけた」時、頑張った人の努力を認め、努力不足の人達だけに努力するよう促し、やり直しをさせることが大事です。
・「廊下でしゃべたAさんとBさんは、やり直し!」
と言ってください。頑張っている人を無視し、全体のやり直しを強要すると、学年が上がるにつれて反抗的になります。
(注意)二人がやり直しをしている時間を他の子達はどうさせますか?a 他の子ども達を待たせて、いっしょに行かせる。
b 待たずに、できた子ども達は先に行かせる。
ここ選択に教師の教育観が反映されます。4月から3月までの1年間で、教師の「今何を大切にしているか」で判断が変わってきます。また、子ども達の実態や成長の姿に応じて判断すべきです。教師の一貫した教育観が必要になります。
A 4月はみんなで待ってやろう。でも、5月からは待たないよ。
B 個人的な理由なら待たない。学級に関わることなら待とう。
大切なことは「子どもを育てる」ことです。育った子どもは適切な判断と行動ができます。そんな子を育てるために、A・Bどちらの方が導きとして良いのかを、教師自身が考え・実行することが大切です。
- 「やれそう」は、その気に?
- <課題>を提示した後、教師からの「考えられそう?」が子ども達をその気にします。
a できそう・考えられそう。
→偉いぞ。頑張ってごらん。
b できなさそう・考えられなさそう。
→課題にもどって、何を考えるのかを明確にする。
→○ページに書いてあるよ。ヒントを出す。
c 「a・b」の混在型。
→「a」の人は、自分の力でやってごらん。「b」の人は先生の周りに来てヒントを出すよ。
課題に対する子ども達の実情を把握することが大事です。本時のねらいに到達させるためには、子ども達の実情に応じて<課題>の変更も重要です。課題設定については、「授業力は自分流」を参照しください。
- 「そんなこと考えたことない」から考えよう!
- 本時の<課題>で学級の子ども達なら、自分の考えを持つことができるだろうか? 主張・根拠・理由の「主張(思い)だけの子は・根拠を見つけられる子は・理由まで言える子は」と実態を予想しながら<学習課題>を設定します。ですが、教師の予想に反することが多いのが子ども達の実態です。
- ①<課題>提示後、「考えられそう?」と子ども達の実情を把握。
②多くの子が「考えられない」というなら、「今日はみんなで考えてみよう」と言葉かけ。
小学校教育の究極の目標は「自立・自律」と、私は考えています。「自分でできる子・自分で戒められる子」を育てることだと思って、教師生活を過ごしてきました。
だからこそ、「考えられそう?」と実態を把握し、「考えられない」実態なら「今日はみんなで考えてみよう」と言葉かけをしてきました。子ども達の「考えられないは、考えた経験がない」ことです。ですから、考えられる自分に成長させるため、考え方・考える順序・考える根拠の見つけ方・そう考えた自分の心の中を明確にする方法を子ども達と学習します。
子ども達にとって一番難解なことは「理由を明確する」ことです。子ども達は未発達ですから、思考や言語も不完全です。ですから、一番最初は「男の勘・女の勘」でいいです。「なんとなく、そう思いました」は、立派な理由です。
「何となく」からスタートし、「自分の心の内にある思いを言語で表現できる子」に成長させることが学習であり教育だと考えています。
- 「できない」「わからない」から、学校へ!
- 合宿集会で「質問」した子に、多くの子ども達がブーイングをしました。私は、
「分からなかったから質問したいので、その質問に対してブチブチ言うのは間違っている。」
と大声を出しました。私は授業中でも同じことを言ってきました。一人の子が発言した時、間違った意見でも馬鹿にした笑いや言葉は許しません。
・学校は、できないことができるようになる場所・分からないことが分かるようになる場所です。できない自分・分からない自分を恥じる必要はありません。できる自分・分かる自分に成長すればいいのです。
・恥ずべきことは、できないことを分からないことを他人の責任にしてしまったり、できるようになる努力・分かるようになる努力をしないことです。
T…何か質問はありませんか?
P…長袖ですか? 半袖でもいいのですか?
T…さっき言いましたよ。しっかり聴いていないさい。
こんなやり取りは、可愛そうです。その子は先生の説明を聞き逃したかもしれませんし、質問者の心情は「半袖を着たいので、それでも許されるか?」だったかもしれません。このようなやり取りをしている学級では、国語の授業で子ども達の多様な考えは表出されるのでしょうか?
私なら、「さっき、服装は長袖で言いましたが、質問は何なの?」と言うでしょう。また、自分の思いを表現できない子なら、「さっき、服装は長袖でと先生は言ったけれど、半袖では駄目なのか?と質問したいの?」と言葉かけをするでしょう。
T…何か質問はありませんか?
P…長袖ですか? 半袖でもいいのですか?
T…○○さんの質問に答えられる人は手を上げて。△△さんどうぞ。
P…長袖です。同じです。
T…○○さん。それでいいですか?
教師の「○○さんが質問したことをどうして君たちは分かったの?」という質問に、「さっき、先生が言いました」と子ども達に答えさせ、聴くことの大切さを感じさせることも指導ですね。
やはり、「教師がその場面で何をねらっているか」が大切になってくるのです。教師の言葉かけは教育観の表れです。
- 「今の姿」を、明日も見たいな!
- 終わりの会・帰りの会で、いい人見つけ・拍手を贈りたい人・ナイスな姿などを紹介する場面を設定している学級は多くあると思います。
生徒指導の3機能の「自己存在感を与える」一つの方法として、拍手を贈ることは存在感を高めるためにとても有効です。学級に在籍する子ども達全員の様々な活動の姿(掃除・遊び)を、教師一人で見ることはできません。そこで、子ども達の目撃証言から存在感を与えるのです。ただし、その紹介がその場だけで終わらず「明日も見られるといいね」と言う教師の言葉かけが全体に広がり、明日につながるのです。
ナイスに紹介された姿に、どんな言葉かけをしますか?
①自分がされた。Aさんが消しゴムを貸してくれた。
②相手がしていた。Aさんは一人でゴミ拾いをしていた。
③他の子にしていた。AさんがBさんに計算の仕方を教えいた。
①なら、その子がAさんに感謝すればいいことですが、教師の言葉かけとしては、「Aさんに有り難うと言ったのですか」と質問した後、二人の素敵な姿に拍手を贈りましょう。
②の場合は、学級全体のためにとって行動なので、Aさんに全員で拍手を贈りましょう。みんなのために働く、奉仕の活動に拍手を贈りましょう。
③の場合は、どんな言葉かけを貴方ならしますか? 人を助ける善行を見逃さなかったCさんも含めて、合計3名に拍手を贈りましょう。
教師からの「素敵な姿が紹介されましたね。明日も見たいですね」の発言に答えようと頑張る子が生まれてくるはずですよ。
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以下、しばらくお待ちください!
-
- 「今の自分」で、満足ですか?
- 担当している学級の先生に、次のような言葉を使って子ども達を注意してもらいました。「先生は、そんなふうに育てたつもりはない」と。
子ども達は「お母さんじゃないから…」とか「お家じゃないのに…」などの反応でした。教師が子ども達を指導しているのは、その子ども達にとっては、育ててもらっている感覚ではないことが分かりました。
- 先生は力を貸すぞ!
- ○
- 個人的なことは後!
- a
b
- 働かざる者、食うべからず!
- 合い言葉にしいてください。
- 座って足を組むと、発育が偏る!
- ○
- シーソーいすをしていて、救急車に運ばれた子を知っているよ。
- ○
- 最低3回くり返す。回数は上達!
- ○
- 「拍手」を贈ろう!
- ○
- お家の人が、あたなの姿をみたら?
- ○○
- 先生は、どうして怒ったのか?
- ○○
- ~~のように見えるよ!
- ○○
- 自分に命令するのは、誰ですか?
- ○○
- 「どうして、どのようにして」の違いは?
- ○○
- 子どもの意見の「つまみ上げ」
- ○○
- 先生は「みんな」と言うけれど。
- ○○
- 楽しくなければ、勉強じゃない!
- ○○
- 課題は、<どちら>一本!
- ○○
教師は、演技者!
・別のページで作成します。乞うご期待ください!
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